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【三田国際科学学園中学校・高等学校】前編/新施設「Zero to One」に込められた教育的な狙いとは?

「科学」を現代人の重要な教養として捉え、サイエンス教育に力を入れる三田国際科学学園中学校・高等学校は2025年、校名に「科学」を加えるとともに、新たな学習施設「Zero to One」(以下、ゼロワン)を設立しました。

本記事では、同校のサイエンス教育責任者であり、ゼロワンの企画と運営に深く携わっている辻敏之先生に、新たな学習棟の開発経緯と施設づくりの狙いについてお聞きしました。

▽導入編はこちらから

目次

「思考を深める」コンセプトの3フロアを本校舎に増築

――まず、ゼロワンを設立した経緯を教えてください。

辻先生:2022年の秋ごろに新たなラボを建設する方針が学園の経営層から伝えられました。当初はラボを数多く設ける案でしたが、本校にはすでに本格的なラボが3室ありました。教員たちと議論する中で、大切なことは思考を深めることであり、さまざまなかたちで思考ができる建物にしようという方針を立てました。

サイエンス教育責任者 辻 敏之先生

辻先生:また、この建物が完成する2025年には校名に「科学」を加えることが決まっており、本校のサイエンス教育への取り組みをシンボリックに示せるアイコンのような施設にしたいという思いもありました。

ゼロワン外観

辻先生:建設場所は、本校舎と裏門の間にある駐輪場スペースです。広さはわずか300平方メートルしかありませんでしたから、増築するかたちで建物を立ち上げ、本校舎の壁の一部を削(はつ)ってつなげました。その経緯が分かるように、元々の外壁や光取りのガラスブロックなどを残してある箇所もあります。

今回増築したエリア
本校舎とつながる階段部分、ピンクと白の壁は外壁をそのまま使用している

考え、議論し、手を動かす環境を兼ね備えた建物を実現

――それぞれのフロアの役割をどのように決めていったのでしょうか。

辻先生:まず、発想したことを、実際に手を動かして作ってみる場として、本校にはなかった工作室を1階に設けることを決めました。設備としては、プログラムした内容を表現するツールとして、3Dプリンターやレーザープリンターを取り揃えました。

また、バッテリーで稼働するモニターや可動式のホワイトボードがあるので、場所にとらわれずに講義や議論ができます。シャッター式搬出入口も設けましたので、大きなオブジェを制作しても分解せずに外へ運び出せますし、ワゴン車を入れて、荷物を積み込むこともできます。

1階 工作室

辻先生:工作室が決まると、2階、3階は比較的、スムーズに内容が定まりました。

2階は活発に議論し、発表するいわばアウトプットの場です。一般的な教室と違って、天井は剥き出にして、声が反響するよう設計したので、大きな声を出しても許容される空間です。机やイス、モニターも動かせるので、自由なレイアウトでグループワークができます。

2階 複数人での議論や発表がしやすいよう可動式家具が多く使われている

辻先生:3階はじっくり考えることがテーマです。本校の生徒たちは体育の授業以外はローファーを履いて過ごしていますが、3階の片側の部屋はカーペット敷きで靴を脱いで上がります。天井には吸音素材が施してありますので、話をしても声が響かず、静かな環境が維持されます。

辻先生:もう片方の部屋は通常の教室としても使いつつ、物理の実験や工作ができる環境も整えました。建物の構造上、床にコンセントを設置できないので、天井から電源を取れるようにしました。

また、天井には耐荷重200kgのリングを設置していますから、物理の実験でも活用ができます。静かな部屋と講義室を隔てるガラス戸は開放することもできますから、3階全体を使い、環境の異なるエリアを活用した授業をすることも可能です。

3階 講義や物理の実験や工作など授業の内容にあわせて使用できる

生徒たちの幅広いニーズに応え、サイエンスのスイッチを入れる

――それぞれの部屋の機能を決めていくうえで大切にしたことは何でしょうか?

辻先生:大切にしたのは、生徒たちのスイッチを入れることです。本校のサイエンス教育では、問いを立て、仮説をつくり、分析・考察をして、表現するというプロセスを大切にしています。しかし、日常生活の中で、集中して考えたり、思い切り自分の意見を言ったりするスイッチを入れるのは簡単なことではありません。そういったスイッチが入る環境、舞台装置が必要であると長年、感じてきました。

ゼロワンの環境は、日頃、授業を受けている教室とはまったく異なります。2階ではイスや机を簡単に動かすことができ、声も響くため、「たくさん発言してみんなと本気で議論をしよう」という気持ちになれる。3階は、靴を脱いで気分が変わり、くつろぎしながらリラックスして考えごとができます。1階はガレージのようで何か作ってみたくなる雰囲気がある。

それぞれの部屋に明確な雰囲気と機能があることで、生徒たちは自然にスイッチが入り、気分を切り替えられる。ディスカッション、ものづくりなど、すべてのニーズにも応えられる。そんな手助けができればと考え、それぞれの部屋の内装を固めていきました。

次回へと続く――【三田国際科学学園中学校・高等学校】後編/新施設「Zero to One」の運営を通じて新たな文化を育む

サイエンス教育の実践をベースに思考を深める場としての明確なコンセプトの基に誕生したゼロワンですが、辻先生は「建物は造り終えて完成ではなく、建てた後に子どもたちをどのように導いていくかを含めて建物」と語ります

後編では、実際の活用内容をお聞きするとともに、現状の課題と今後の展望を紹介していきます。

▽つづきはこちらから


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