
2025年に創立140周年を迎えた「日本学園中学校・高等学校」(東京都世田谷区松原)は、明治大学の系列校化にともない、2026年4月に「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」へと改称します。日本学園の人づくりの核であり、明治大学の系列校化でさらなる進化が期待される「創発学」について、谷口哲郎校長先生にお聞きしました。

目次
- ハードルを乗り越えることが創発力を高める
- 得意を伸ばし、自らの道を見つけた創発学の卒業生たち
- 積み重ねた自信はいつか伏流水のように得意になって表れる
- 明大世田谷の創発学はハイブリッド化でパワーアップする
- 次回へと続く――「明大世田谷」誕生を機に生まれる創発学のソフト・ハードの進化とは?【後編】
ハードルを乗り越えることが創発力を高める
――前回の記事でご紹介した通り、日本学園では20年以上にわたり創発学に取り組まれています。中学時代から、林業や漁業、東日本大震災の被災地などの現場で取材をし、体験を起点に、課題への気づき、情報収集と分析、試行錯誤などを経て、自ら仮説を立て、新聞づくりなどのアウトプットを目指していきます。生徒たちの学びで大切なことは何でしょうか?
谷口校長:取材をして記事を書くプロセスで、生徒たちは行き詰まりを感じる場面があります。集めている情報量が足りないから課題も見えてこないし、仮説も立てられない。
そこで大切なのは、現地でしか得られない情報です。森に入ってよく観察すれば、リスがかじった痕のあるドングリが落ちている。被災地であれば実際に地震や津波を経験した人に話を聞くことができます。
私たちは「特ダネ」と呼んでいますが、せっかく現場に行くのだから、現地でしか得られない特ダネをきちんと集めてくるよう生徒たちに促しています。
特ダネの大切さを痛感するのは、五感を駆使して調査した他の生徒たちがそれを集められていることを目の当たりにする時です。特ダネを得られるかは本人の取材力次第です。他のグループの特ダネを見て、「あぁ、同じ場所にいたのに自分はスルーしてしまった」という悔しい思いから学び合いが生まれ、現地での取材力もアップしていきます。

――体験から入り、困難にぶつかり、試行錯誤することが大切なのでしょうか?
谷口校長:ハードルがあって、人は初めて「じゃあ、どうする?」と考えます。そこを先生がすぐに教えてしまうと面白くありません。自らハードルを乗り越えることで、創発力を高めるのです。
例えば、中学3年生では「15年後の自分」という創発学のプログラムがあります。将来のなりたい自分をデザインし、描くのですが、ロールモデルになるような著名人に取材できれば内容の濃い発表につながります。でも、中学生のつながりは家族や友だちぐらいですから、なかなか目標の人には辿りつきません。では、どうするか?それを生徒たちに考えさせるのです。
日本学園には約60人の先生方がいます。先生一人ひとりに聞いていけば、どこかでつながるかもしれません。人の後ろには人がいる。私たちの社会は人間関係のネットワークになっていると気づけるのです。
本気で調べたいことがあるから、現場にたどりついて、「本物の人」に出会う。本物の人というのが大切です。
例えば、過去に『ウルトラマン』の円谷プロダクションを取材したいという生徒がいました。当時、世田谷区内に円谷プロがあったので、取材を申し込み、特撮のプロに取材をして、しっかりとした発表をしました。その生徒は大学進学後に、イベントプロデューサーを志し、現在では有名なキャラクター・イベントを手がける仕事をしています。
実際にやっている人に出会うと本気度が上がってくる。自分にもできるかもしれないと思えるから、できない自分を引き上げようとする。そういう風に自己実現力、自己創造力がアップするのが創発学の良いところですね。

得意を伸ばし、自らの道を見つけた創発学の卒業生たち
――創発学を学んだ卒業生や在校生はどのような成長をしていますか?
谷口校長:例えば、中学時代に創発学を学んだA君は高校生になると単身1年間ブラジルに留学しました。現地の中学や高校、大学を取材し、ブラジルの教育制度を調査したのです。その内容を活用して、総合型受験で大学合格を勝ち取りました。大学でも留学生寮で寮長を務めて語学力を磨き、大手商社に就職して、現在はタイに駐在しています。
B君は、中学時代からアプリ開発に興味を持ち、カリフォルニア大学でコンピューターサイエンスを学び、外資系企業でアプリ開発に携わっています。中学時代に創発学を学んだC君とD君は共にプログラミングに興味があり、中学3年生でアイボのプログラミングコンテスト全国大会に出場。C君は岐阜大学で医学を学び、D君は北海道大学でロボット工学を学んでいます。
2026年に高校3年生になるE君は「勉強はあまり得意じゃないから、好きなことを伸ばします」と宣言。史上最年少でドローン国家資格を取得して、数々の動画をSNSに投稿。メディアからも取材を受けるほど技量を高め、2025年に新たに完成した本校の5号館をドローン映像で紹介する動画を制作してくれました。本人の意向で、「第4回瀬戸内ドローン映像祭」に応募したところ、学生部門でグランプリを受賞しました。
▽グランプリを受賞したドローン映像は下記からご覧ください(外部サイトへ遷移します)
https://setouchi-drone.org/2025/12/02/第4回瀬戸内ドローン映像祭2025%E3%80%80学生部門グランプ/
今回ご紹介した学生は、ほんの一例です。明治大学と今後の教育について話し合う場では、創発学を学び、各界で活躍する卒業生の事例を数多く紹介したところ、大学の教授陣から「ぜひ、創発学を継続してください」という賛意をいただきました。
積み重ねた自信はいつか伏流水のように得意になって表れる
――日本学園で創発学を学んだ生徒たちは、それぞれのペースで自分の「得意を見つけ、得意を伸ばす」ことができているように思います。
谷口校長:創発学は「非認知能力」を伸ばしています。非認知能力とは、客観的に数字で測ることができない能力のことであり、意欲や自信、自制、協調、共感といった心の部分の能力のことです。
その能力は山に降った雨が長い時間をかけて湧水となる「伏流水」のように、いつかきっと表に現れるはずです。それは、社会で活躍する卒業生たちを見れば一目瞭然です。
だからこそ、得意を見つけて、得意を伸ばすのです。得意を見つけるポイントは「自信」です。生徒自らが自信をアップしていくことで、自分は何者かであるかを感じ、それが自立の核になっていく。だからこそ、できるだけたくさんの現場を用意しています。「いい取材ができた」「友だちがいいねと言ってくれた」「親にも褒められた」といった経験が自信を育んでいきます。
日本学園の教育目標は、大学入試突破だけではありません。もっと大切なのはその先にある将来の道を見つけることです。将来、自分がその道を歩いて幸福であることが一番大切なのです。
だから、創発学の掛け言葉は“Make me happy, make you happy”です。「まず、自分が幸せになろう。そうすれば、周りも幸せにできる」のです。得意なことがあれば、自分で自分を認めてあげられるし、人にも分けてあげられる。そうすることで、もっともっと幸福感が高まりますからね。

明大世田谷の創発学はハイブリッド化でパワーアップする
――2026年4月には明大世田谷となり、中学1年生と高校1年生に女子生徒も入学してきます。創発学は今後も継続されるのでしょうか?
谷口校長:女子の入学希望者の保護者からは「創発学は他の学校にはない、とても魅力的な教育」と言っていただいています。また、明治大学の教授陣にも「ぜひ、創発学を学んだ生徒たちを明治大学に送ってください」とも言われています。今後も創発学を続けていきますし、女子が入ってくることで、どのような効果が生まれるか本当に楽しみです。
明治大学と描いている創発学の未来像は「ハイブリッド化」です。「国際理解教育」「キャリア教育」「理数教育」と創発学を掛け算していきます。それぞれの領域で、体験をして、課題に気づき、情報を収集して、試行錯誤しながら、仮説を立て、行動していく。明治大学のさらなる協力も得られるようになるので、創発学はパワーアップしていきます。
次回へと続く――「明大世田谷」誕生を機に生まれる創発学のソフト・ハードの進化とは?【後編】
”人は得意な道で成長すればよい”という教育方針を貫き、創発学のさらなる充実を図る日本学園。明大世田谷の誕生に向けて、新たに建設した校舎には創発学に根差した学びの空間が誕生しました。後編では新校舎に秘められた創発学を加速する仕掛けに迫っていきます。
〈インタビュー・撮影協力〉
明治大学付属世田谷中学校・高等学校(現 日本学園中学校・高等学校 2026年4月校名変更予定)
所在地:東京都世田谷区松原2-7-34
公式HP:明治大学付属世田谷中学校・高等学校
▽お気軽にまずはご相談ください!

▽学校・キャンパスの事例集を無料配布中です!
